走ることに目覚めたのは誰もいない夜道だった
僕が走っていて楽しいと感じ始めたとき、
それはずっと昔のことだけど、
そこは誰もいない深夜の舗装道路だった。
走り出した時分は、せいぜい20分間だった。当たり前のように「一生懸命走るべきだ」と苦しみを踏みしめながら足を運んでいた。走り終えて手にしたのは、やり遂げたという些細な達成感。自己満足に過ぎなかったけど、よく考えたら自分を満足させる経験は、そうざらにはないのだった。だから続けたのだろうと思う。その道がどこに続いているのか、やがて周りの景色がどんな風に変わっていくのか、その当時の僕にはまるで想像がつかなかったけど。
深夜の人通りの途絶えた街を走るようになって走り方が変わった。一生懸命走らなくなった。初心者ランナーとして時間と距離で達成感を数値化していたが、その意味も薄らいだ。腕時計を気にしなければ、周りの景色があまり目に入らないだけに、走っているスピード感が増した。そして意識は内面に向いていった。
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