0合目から登る富士登山【2日目】

450ビュー

山行

富士登山2日目は、7合目の山小屋・鎌岩館から始まります。

17時半に夕食とったあと、ベットの寝袋に潜り込むとすぐに眠りに落ちました。

深い眠りの淵から浮き上がるような感覚で目が覚めると、小屋の中は明るいままです。腕時計を見るとまだ19時過ぎでした。

20時に消灯、そのあとはなんとなくウトウトして寝袋の中で横たわって過ごしました。

23時を回ったところで周りのほとんどの登山客が出発の準備を始めたので、私たちもそれに倣います。

Mt.Fuji2

 

化繊のインシュレーションを着込み、頭にはヘッドライトを装着して岩の登山道に踏み出します。驚くことに、真夜中にもかかわらず次から次へと登山者が登ってきて、人の途絶えることはほとんどありません。3点支持で取り付く必要があるような斜面の下では長い渋滞となっているところもあります。

きつい斜面に息が上がります。歩幅をできるだけ小さくすることを心がけて進みます。高山病の辛い症状はありませんが、手の指先が若干しびれるような気がするのは、寒さだけが原因ではないのかもしれません。

暗い斜面をヘッドライトの明かりだけを頼りに進んで行きます。周りが登山者だらけなので道迷いの不安はまったくありません。空を見上げると、曇っていますが星が見える切れ間もあります。

山小屋前の平らな道は煌々と明かりで照らされ、たくさんの登山者が休んでいます。疲労困憊という感じで座り込んでいるのは、夜通し歩き続けてきた登山者なのでしょう。

深夜の富士登山1

深夜の富士登山2

周りの会話を聞く限りでは、海外らからの登山者がたくさんいるようです。さっき通り過ぎた小屋の前では、外国人の団体さんが並んでリーダーの点呼を受けていました。もしかしたら日本人の登山者より比率は高いかもしれません。

9合目の小屋で500mlのミネラルウォーターを2本買い、昨日麓のコンビニで買ったおにぎりの残りひとつを食べました。気温がだいぶ低くなり、風も強くなってきました。レインパンツをはき、手袋をします。

深夜の富士登山3

登ってきた道を振り返ると、ヘッドライトの明かりが連なって進んでいるのがわかります。ということは、富士山頂への登山道は、シーズン中に限っていえばほぼ24時間、登山者の姿が途絶えることはないということになります。そう考えるとすごいですね。

9合目から先はいよいよ登りがキツくなり、登山者もばらけてきます。真っ暗な岩場では、先行者がいないとルートを見つけるのも一苦労です。

そして午前3時前、山頂直下の鳥居をくぐることができました。

周りが明るければ記念写真も撮れたのですが、ヘッドライトの明かりだけでは無理です。頂上に出たところに比較的広い展望台のような場所がありました。しかし、これから登ってくる登山者の数を考えると、夜明けまでにはものすごい混雑になると思われます。

お鉢巡りの斜面を5分ほど進んだところに、東方面を向いて背中をもたれかけることができる小さな岩のくぼみを見つけました。吹きさらしの強い風を遮るのに有効なようです。まだ夜明けまでには2時間近くありますが、ここに腰をおろして待つこととします。

もしかしたら日本人の登山者より比率が高いような気さえします。

富士山頂にて2

この写真は山頂に捨てられたゴミ袋ではありません。寒さのあまりエマージェンシーキットのレスキューシートにくるまって耐える同行者の姿です^^;

私はというと、インシュレーションの上にレインウエアーを着込んでフードをかぶり、ネックウォーマーで顔半分をおおおうという防寒スタイル。あぐらをかいた足の上にはザックをのせてカバーします。おしりの下にはサーマレストのZシート、これを持ってきたのは正解でした。

それでも寒い! 登ってきたときにかいた汗が冷えて、震えが止まりません。持ってきた温度計を見ると、気温は4℃ですが、山頂の強風にさらされて体感温度はもっと低いことは確実です。

食べ物を口にすることで少しでも温まるのではないかと、山小屋で夕食時に渡された朝食の包みを開けてみます。弁当かおにぎりを想像していたのですが、中には菓子パンが二つと、なぜか緑茶のミニパックが。営業終了前日の山小屋で多くを期待してはいけませんね。気圧の関係でパンパンに膨らんだ菓子パンの袋を開けて、甘いパンを緑茶で飲み込みます。

しきりとあくびが出ますが、眠られるような状況ではありません。というか、眠ってしまうようならマジにヤバそうです。身体の芯からわき上がってくる震え以上に身体を揺さぶって身体を温めます。レスキューシートにくるまっている同行者を横目に、ビバークってこんなのかな、と思いました。

なんとなく空が明るくなってきた頃には、私たちの周りも登山客で混み合ってきました。こんな狭い場所にも人が来るということは山頂には相当の人数が上がっているのでしょう。

いよいよ夜明けの時間を迎えました。

しかし空には雲が次から次へと流れるばかりで、御来光の片鱗はどこにもありません。

富士山頂20160911

残念ですが、これも富士山です。

「今日は御来光は見られません。これ以上、山頂にいる意味はないので下山を開始します」

私たちの隣に陣取っていた団体さんのリーダーのかけ声で、私たちも腰を上げる準備を始めました。

富士山山頂3

時間はたっぷりあるので、「御来光が無理ならお鉢巡りだ」とザックを背負い直したのですが、冷たい強風にあおられてすぐに断念しました。冗談ではなく遭難しそうなレベルの風です。

同じ思いの登山者たちと一緒に下山道に向かいます。

下りにさしかかったところで、みんなが見上げて指さしている方向を見ると、崖の縁から透き通った長い氷柱が垂れ下がっているのです。富士山が9月の早い時期に「山じまい」となる理由がわかりました。日本で一番たくさんの登山者が頂上を目指し、山小屋やトイレが整備されていて誰もが登れる富士山だからこそなのですね。

下山はブルドーザー道を利用します。この道は山小屋に物資を運ぶためにブルドーザーが通る道であり、幅が広い砂利道で大きくジグザグを描きながら高度を下げていきます。たくさんの登山者が歩いていますが、これだけ道の幅が広いと先がつまることはありません。

しっかりとした登山靴にゲイターを付け、両手にトレッキングポールを握って歩けば、踵で砂利をザクザクと踏んで、それこそ滑るようにおりていくことが可能です。私は登りより下りの方が苦手なのですが、この道なら安全にどんどん下っていけますね。

そしてこの下山道で、富士山は私たちに新たな姿を見せてくれたのです。

富士の雲海4

富士の雲海5

富士の雲海6

雲が割れて青空が広がり、目の前には見渡す限りどこまでも続く雲海が立ち現れたのです。

立ち止まって目の前に広がる雲海を眺めていると、その広大な景色が心に染みわたり、思わず目頭が熱くなるほどです。

富士山登って良かった、と心から思った瞬間でした。

富士の雲海7

富士の雲海8

日本国内はもとより海外からもたくさんの登山者が山頂を目指す富士山に0合目から登ってみて、その長い歴史と山容の大きさに直に触れることができました。富士山の歴史という観点からすれば、私が体験した30時間などはホンの些細な瞬間に過ぎません。またこの足でトレースした30㎞ばかりの道のりも、富士の山塊に付したひっかき傷にもならないでしょう。

富士山にやってくる登山者は、人間個人の所作の非力さを思い出し、そしてそのちっぽけな胸にそれぞれの富士山を携えて帰って行くのではないかと思うのです。

 

6合目に戻ってきた

登ってきたときと同じように6合目を過ぎると周りの登山客はいなくなってしまいます。

急に雲が広がり、お腹も空いたので少しおりたところにある山小屋できのこ山菜うどんを頂きました。

山菜うどん

これがとても美味しかった。山頂で口にした菓子パン以来の食事で、身体も心も温まります。私の口には、吉田うどんより合っていましたね。

このあとは1合目まで下り、馬返からはバスに乗って富士山駅に戻りました。

ずっと遅い時間でとってあった高速バスの予約を取り直して、夕方には家に帰ってこられました。

 

 

 

 

Posted by movinow