ロードレーサー

【ANCHOR RL8】ロードレーサーで落車して鎖骨を骨折した話

これは、趣味のロードレーサーで落車して鎖骨を骨折し、その回復までの記録です。

ロードレーサー乗車中にコケて肩から落ち、鎖骨を折るというのは、ある程度には一般的な不運だと思います。

起きてしまったことを悔やむ気持ちはありますが、

同じ不運に見舞われた自転車乗りと、そのリスクをかかえて走り続ける自転車乗りのためになればと思い、不運の代償がいかほどのものかという事実を、一個人の限られた経験ですが、ここに記しておこうと思います。

これまでの自転車歴について(実用車・ママチャリをのぞく)

1台目・大学2年の夏休みのバイトで貯めたお金で買ったランドナー

2台目・20代の後半に実家近くのショップで購入したランドナー・ノートン

3台目・30代なかばで、今はなき神田のアルプスで作ってもらったランドナー

4台目・6年前に購入したブリジストンのanchor RL-8

5台目・5年前に購入したブロンプトンM6L

年数は経っていますが、継続して乗っていたわけではなく、そのときどきですが数年で乗らなくなってしまうことばかりでした。今手元に残っているのは anchor とブロンプトンの2台だけです。

それまで乗っていたツーリング用のランドナーとは異次元の軽やかな操作性とスピードを体験させてくれたanchorさえも、仕事が忙しくて時間がとれないという言い訳のもと、4年間ほど室内のバイクラックに吊されたままでした。

今年になって時間がとれるようになり、ランニングにはもう暑すぎる季節になったなぁ、と感じた入梅前のある日に、anchorを思い出したのでした。

それからは走行距離を徐々に伸ばし、再びピチピチのサイクルジャージが着られるようになったのは1ヶ月半後です。

残業まみれのクソ忙しい仕事に追われ、通勤ランを走ることができなくなって増えた10kgの体重もすっかり落ちました。

今年の夏も猛暑でしたが、8月は1,000km以上を走り、顔も手足もまっ黒に日焼けしましたね。楽しい夏でした。

そして9月に入り、頭がクラクラするような酷暑が少し和らぎ、まるでクーラーの冷風を浴びて走っているみたいに快適だー、と気持ちよく脚を回していたときに、落車はおきたのです。

当日・9月15日(日)落車

この日は朝早くから昭島にある実家へ自転車で向かった。往復90kmあまり、ロードレーサーで走れば構える距離でもない。少し気温が下がっただけで、ずいぶんと身体に余裕を感じる。別段用事があるわけでもないので、母の顔を見て、ボトルに水を満たしただけですぐに帰路についた。

その帰り道、いつもの多摩川サイクリングロード、堤政橋近くの野球場の横で、道路の隆起にハンドルを取られて落車。

ハンドルの握りが甘く、前輪が跳ねた瞬間にハンドルが完全に手から離れる。右に急ハンドルを切った形となり、路面に強く叩きつけられる。

バイクの損傷

  • 右ブレーキブラケットが内側に移動し、大きな傷がつく。
  • チェーン外れ。
  • 前後ブレーキキャリパーのセンターがズレたのか、ブレーキシューが当たってホイールが回らない。

その場でanchorを起こし、サドルバックからゴム手袋を出してチェーンをはめる。

通りすがりのランナーに「だいじょうぶですか?」と声をかけられ「だいじょうぶです」と応える。

ブレーキキャリパーのリリースレバーを上げることで走行が可能となる。

身体の損傷

  • 左肩【挫傷大】
  • 左腕【挫傷中】
  • 左脚【挫傷小】
  • ヘルメットの左側頭部に打ち付けた傷はあるが、頭部、顔面ともに無傷。

自転車走行は可能だが、何かヤバい感じありあり。

左腕を上げると肩に強い痛みあり、左手でハンドサインが出せない。

ギアをインナーロー近くまで落として、残りの30kmあまりをゆっくり乗車して帰宅。

家でジャージを脱ぐと左肩から襟にかけてすり切れているのを知る。

落車・帰宅直後

すり切れたサイクルジャージヘリメットの傷

とりあえずシャワーを軽く浴びて、パソコンを起動し、日曜日でも診察してくれる病院をネットで探す。

何本か電話をかけて整形外科医が診療してくれる病院を見つけ、タクシーで向かう。

レントゲンを撮って怪しいということで、次にCTを撮って、左鎖骨遠位端(鎖骨の肩に近い部分)骨折が判明。入院して、折れた骨をつなげるための手術が必要とのこと。

麻酔医のスケジュールの関係から、三日後に入院、その翌日に手術となる。

帯状の固定バンド(クラビクルバンド)を装着され、三角巾で左腕を吊り、痛み止めの錠剤を処方された。タクシーで帰宅する。

その晩は、仰向けでは患部が痛くて眠れず、ネットで調べて、座椅子をリクライニングしてどうにか眠る。

1日後・9月16日(月)終日在宅

痛み止めが効いているが、横になり辛いこともあり、休んだ気があまりしない。寝る前に濡れタオルで身体を拭く。

2日後・9月17日(火)入院前検査

昼前にタクシーを呼んで通院。

入院前の検査(採血、採尿、レントゲン、心電図)をして、手術の説明(全身麻酔、骨をつなげるプレートを埋め込む、患部を切り開いてみて切り開いてみて可能であればワイヤー固定)を受けて、同意書に署名する。

帰宅してから、入院も手術も生まれて初めての経験なので、病院でもらった案内の冊子を参照して持ち物(下着、歯ブラシとコップ、タオル、電動シェーバー、スマホの充電器など)を準備する。

3日後・9月18日(水)入院

担当医との会話では、今週中には帰ってこられそうだが、心配なのは飼い猫ケインと、ベランダのプランターだ。ケインの飲み水容器を倍にして、プランターにもたっぷり水やりをした。

タクシーを呼んで病院へ。

10時から入院の受け付け。案内されたのは4人部屋の窓側、広くて新しい病室だった。

手首に、名前・生年月日・年齢・バーコードなどが印字されたやわらかいバンドを着けられる。

説明、検査、手術などの要所要所で、ノートPCに接続したバーコードリーダーでスキャンされるわけだが、なるほどと思う。

私も仕事で使ったことがある。PCの使用が前提だが、作業工程を管理するのに、モノに添付するバーコードはとても有効だ。

麻酔科医より麻酔の説明があり、同意書にサイン。

夕方、看護師さんにクラビクルバンドを外してもらい、シャワーを浴びる。

病院食は質素だが味は悪くない。ご飯は200gとしっかり。基礎代謝の最低限必要なカロリーを考えて調理されているとすると、普段の食事がいかに「食べ過ぎ」に寄っているかがわかる。

病院食

病床のベットは寝心地がよく、ボタンひとつでリクライニングの調整ができるので、ほぼ痛みを感じることなく8時間以上眠ることができた。

同室の患者さんたちは糖尿病の検査・治療の模様。数字時間おきに血糖値を計ったり、インシュリンを注射したりで看護師さんがやってくる。

登山泊で使っている、アイマスクとシリコンの耳栓がここでも有効だった。

4日後・9月19日(木)手術

手術当日は絶食、水を飲めるのは8時までと言われていた。その前にヒゲを剃り、歯を磨いて、着物型の手術衣に着替える。そして、手術中に起きる血栓などの血流循環に関するトラブルを防ぐ目的があるらしい、膝下まである白いソックスを着用する。

8時過ぎ、右手首上から点滴が始まった。点滴も生まれて初めての経験だ。点滴をしてくれた男性医師にきくと、脱水を防ぐための水分やミネラル、抗生物質、麻酔薬などを投与するらしい。

腕につながれた点滴

11時過ぎに呼ばれて、担当の若い看護師さんと階下の手術室まで点滴スタンドを引いて、歩いて行く。

歩いている間に、看護師さんから、手術室に入ってから行われる、名前や生年月日、手術患部を受け答えする申し送りについて教わる。

手術室に入ると2名の若い看護師さんが対応に出てきた。

「今日の手術を担当します。よろしくお願いします」

すらっとした美人の(マスクをしていたので多分)これまたとても若い看護師さんだ。

ただ、身につけている手術着が、マスクを含めてオール・ブルーなのだ。

その姿を見て、初めて手術という現実の恐怖を感じた。

白が「白衣の天使」だとすると、「青衣の…」なんと表現したらよいのかわからないが、私にはとても怖く見えた。同じ手術着を着ている男性の麻酔医や整形外科医は、ぜんぜん怖く見えなかったので、不思議なものだと思う。

その至って主観的な感想を、横に立っている天使の看護師さんに伝えたかったのだが、ちょっと不謹慎にも思えたのでやめた。

頭髪をまとめるソフトキャップをかぶせられて入室する。

手術室は想像以上に広かった。

天井からぶら下がる、昆虫の複眼を思わせる巨大な無影灯がまず目につく。手術台の周りにも色々な機材が並んでいるようだが、それらを観察する精神的な余裕はなかった。

手術台の上で、手術衣の下につけていたクラビクルバンドを外してもらう。右腕に点滴のチューブがついているのでややこしい。

仰向けになると、青衣の看護師さんにより、右腕脇に血圧計、足先に何かのモニターのクリップなどを手際よくつけられていくの感じる。

男性の麻酔医の手で局所麻酔が始まる。

超音波で神経を確認して麻酔をかけるという説明を受けていた。左の首筋にチクリと鋭い痛みを感じて、針を刺されたことを知る。そのあとは「ズンズンきますよ」という麻酔医の言葉どおり、首の根元の奥の方に何かが入ってくる重く鈍い感覚があった。

麻酔はすぐに効いた。左腕を動かしても肩の痛みがまったく感じなくなったことを確認して全身麻酔が始まる。

口と鼻を覆うマスクが当てられ、ゆっくり深呼吸をするように指示される。

「だんだんまぶたが重くなります」

麻酔医に言われたが、ぜんぜん眠くならない。

周りの音もよく聞こえるしなー、それにここはとても寒くて震えがとまらん、などと考えていたら、いきなり落ちた。

 

「○○さん!」名前を呼ばれて麻酔から覚める。

「気分はどうですか」ときかれて、「すごいぐっすり眠った気分です」と応える。深い眠りから目覚めたしんどさがあったが、気分が悪いことはない。

時刻をたずねると手術の間に2時間ちょっと経過したようだ。執刀してくれた若い整形外科医の声が聞こえる。

「プレートを使う必要はありませんでした。ワイヤーで固定できましたよ」

よかった。

手術台から病室のベットに移される。青衣の看護師さんと目が合う。

「ありがとうございました」と私。

「お大事にしてください」

やはり天使でしたか。勝手にビビってすみませぬ。

ベットごとエレベーターに乗せられ、病室に運ばれる。

酸素マスクをつけられて、まず感じたのは喉の奥の痛みだった。

これは前日に麻酔医から説明されていたことだが、全身麻酔中に人工呼吸を施すために口から喉を通して気管に管を入れるため、術後は喉に痛みが出たり、痰ががからむことがあるとのこと。

看護師さんに触られて、左腕の肘から上は感覚が無い事に気がつく。両手の人差し指と親指の先もしびれているのがわかった。

「麻酔が切れてきて痛み出したら言ってください」

決まった時間ごとに看護師さんがきて体温と血圧を測り、様子を見ていく。私は眠る。

夕食は、執刀医の許可が出て、おかゆだが食べることができた。すべてを残さず食べる。

小用を足したくて、夜勤の看護師さんに手伝ってもらってトイレに行く。右腕に点滴、胸と左人差し指にはセンサーがつけられてポータブルの発信器につながっている。歩くことは問題ないが、身体に取り付けられたチューブとコードが煩わしい。

口から食事を摂れるということで、看護師さんが点滴を外してくれた。手首の上に刺されていた点滴の針を見て、思いがけず太くて長いことに驚く。

眠る。しばらくしてベットの中が熱くなってきたので看護師さんに伝える。どうやら電気毛布で保温されていたらしい。手術室で痛みはまったく感じなかったが、あの寒さは間違いなかった。

真夜中に目が覚める。左肩に太い杭を打ち込まれたような痛みを感じる。麻酔が切れてきたようだ。たまらず枕元のナースコールのボタンを押す。

消灯した暗い病室に、手持ちの小さいライトを持ってやってきた夜勤の看護師さんに、痛み止めをくださいと伝える。

だいぶ時間が経ったあと、看護師さんが戻ってきた。

「飲み薬はダメみたい。点滴か座薬になるけど、点滴は外してしまったし。座薬は自分で入れられるよね」

「いまだかつて座薬を使ったことはありません」

「そっか。じゃあ身体を横に、左側を下にして」看護師さんは透明な薄い手袋をはめている。

「左肩が痛くて、難易度高すぎです」

「腰だけでいいから、どうにか頑張ってみて」

「ウギィ」

「もうちょっと」

「アゥッ」

「OK」

座薬が入った感覚は無かったが、しばらく肩の痛みを我慢しているうちに眠りにつくことができた。

5日後・9月20日(金)入院中

5時半に起床、6時にカーテンを開ける。この日もいい天気だ。

朝の巡回にやってきた昨日とは別の看護師さんに、座薬の痛み止めの持続時間をきく。もうすぐきれる頃かと思い、飲み薬を服用可能かたずねる。

シャワーを浴びられるかも合わせて、担当医に確認してくれるとのこと。

この日の予定をきくと、午後にリハビリの説明があるとのことだった。

朝食をとり、トイレを済ませ、歯を磨き、ヒゲを剃って、とりあえずやることは終了。1冊だけ持ってきた単行本も読み終わってしまったので、リクライニングしたベットに身体を預けてiPhoneをいじったり、MacBookを開いたりして時間を潰す。

痛みはほとんどないと申告したためか、看護師さんは朝イチで来たきり一度も顔を見せていない。

昼食をとってだいぶ経ってからリハビリの男性医がやってくる。

廊下に出て、右手を壁につき、腰から前屈して、吊った左腕を力を抜いて下に垂らし、下半身の前後運動で左腕を振り子のように動かす運動を習う。痛みがない範囲で、できるだけ頻繁に行うべし。退院後の通院予定を決める。

シャワーを浴びられる時間が17時までだったので、16時くらいにナースコールして、シャワーの可否と飲み薬の痛み止めについてきいてみる。

しかし看護師さんは「まだ先生からの回答がありません。折返し待ちです」とにべもなく言い放って、忙しそうに帰ってしまった。朝の巡回時にノートPCにパチパチ入力していたが、システムを運用するのは人間であることを再認識。

明日が土曜日だということで、夕方に手術と入院費の精算がある。1階まで降りて窓口で支払い。10万円ちょっと。入院時にあった説明によると、高額医療費の支給申請をすれば、ある限度額を超えた金額は還付されるようだ。

その後も看護師さんは顔を見せず、これだったら家に帰った方がよかったなと思いながら寝ていると、消灯のタイミングで、たぶんリーダー的役割であろう年配の看護師さんがやってきて、「痛み止めはだいじょうぶ?」「指先の痺れは治った?」などときいて体温を測ってくれた。なるほど、システムを運用する人間が不完全だとしてもフォローし合えるというのがチームのメリットだな。それにしてもあの看護師さん、子供の頃に観たアニメ『銀河鉄道999』のメーテルのような雰囲気だったなぁ、などとくだらぬことを考えながら眠りについた。

6日後・9月21日(土)退院

朝食後、看護師さんに退院の希望時間を訊かれて「なる早でお願いします」と伝えた。

9時過ぎには退院。土曜日でタクシーがつかまらなかったので路線バスと歩きで帰宅する。

一番の心配事だったケインも、三日三晩のお留守番の役目を果たしてくれていた。とりあえずよかった。

持ち帰った衣類を洗濯する。ベランダで洗濯物を干すのに、左腕が使えないのがきびしいことが判明。右手の指を駆使してどうにか対応する。

夜は「猫の看護師さん」が巡回。やけに左腕に頭を押しつけてくると思ったら、三角巾のほつれた糸をむにゃむみゃ食べていたりするから始末に悪い。

手術後患部

7日後・9月22日(日)洗車

自分の身体だけではなく、傷付いた自転車もメンテしなくてはということで、anchorを洗車する。

左腕で重量を持ち上げると肩が痛むが、右腕を使ってメンテナンススタンドに自転車を据え付ける。

床にはキャンプ用のグランドシートの上に古新聞を広げる。ワコーズのチェーンクリーナーとマルチフォームクリーナーを使った室内洗車。

左腕が上手く使えない分、ゆっくり時間をかける。ピカピカになったチェーンとスプロケットは、とても気分がよい。

ギアの変速は問題ないようだ。右ブレーキレバーの前部に深い傷ができているが、フレームに新たに目立った傷はできていない。

ショップに判断してもらう必要があるが、どうやら乗り続けられそう。anchorは購入して6年が経っているので、この機会にオーバーホールをお願いしようと考えている。

8日後・9月23日(月)ボディブラシ購入

これまで身体を洗うのに「ゴシゴシタオル」を愛用してきたが、片手だけでは上手く洗えないということで、長い柄のついたボディブラシを購入。右手だけで、背中を含めて身体の隅々まで洗えるのが気持ちよい。

9日後・9月24日(火)ステッパー導入

病院で処方された痛み止めの服用をやめる。左腕がほぼ水平まで上げられるようになる。

片腕を吊ったままでもできる室内アクティビティとして『ステッパー』を導入してみる。

ネットで調べて、エクサー社の高いやつ(50,000円超!)にしたのだが、結果として正解だった。

ステッパー

ヘビーデューティな外見がかっこよく、場所も取らず、片手で移動できる手軽さ。ネジひとつで踏み込んだときの負荷を調整可能で、何より動作音が無音なのが素晴らしい。

なめていた運動効果もなかなかのもの。1時間30分踏んで、消費カロリーは400kclちょっと。汗は流れるが、自転車のローラー台に比べたらかわいいもの。

机の上にオリコンを置いてMacBook Pro を広げれば疑似スタンディングデスクとなり、Youtubeを観たり、Kindleを読みながらできるのがよい。

もっと贅沢を言えば、Zwiftに連携できれば、もっと楽しいのにな。Zwift内でランナーは見かけるが、ウォーカーは見たことがないけど。

10日後・9月25日(水)洗顔が可能に

左肩の前部に張りを感じるが、両手で顔を洗うことができるようになる。

座椅子を使わず、平らな布団で眠ることができるようになる。腕の位置によっては痛みがあるので、眠るときは三角巾を使う。

11日後・9月26日(木)ペダル交換

洗濯物を干すときに、左腕をどうにか我慢すれば頭上まで伸ばすことができるようになった。

anchorのオーバーホールをお願いするのにショップまで自走するつもりだが、左腕に力を入れると左肩が痛むので、ビンディングペダルを外すときがしんどい。

一時的な対応としてペダルをSPD-SLからフラットペダルに交換する。

これは、ブロンプトンにつけようと思って購入したワンタッチペダルで、使わず死蔵されていたもの。

ペダルを変えるだけでロードレーサーが驚くほどチープに、かっこ悪くなったが致し方なし。

12日後・9月27日(金)リハビリ、オーバーホール

午前中、通院してリハビリ。

「アクリルコーン」という円錐形のカップを使った上腕の運動。20個くらい重ねられたカップを左手を使って一つ一つ別の場所に移動する。

カップが積み上がっていくと、徐々に鎖骨周りに張りを感じる。何度か繰り返したが、地味に効く運動だ。

ベットに横になって左腕のマッサージを受ける。

仰向けになって頭の後ろで指を組み、顔の上で肘を開閉する運動を教わる。それから「机の上を雑巾で拭く」という動作を繰り返すように指示される。次のリハビリ通院は一週間後。

午後はanchorをショップに持ち込んだ。

今回の事故の点検を兼ねて、全体のオーバーホールと、ついでに若干の機能的グレードアップをお願いする。

コンポはもともとデュラエースの9000系がのっているのだが、これをDi2で電装化することにする。グレードはアルテグラ。

性能上はデュラエースと遜色無しという店員さんの言葉と、デュラエースのアドバンテージを生かせる力量とは無縁ということでアルテグラに決定。

見積は約17万円。納期は約3週間。

anchorの入院・改造費の方が、乗り手の医療費より高くついたことに関して、特に問題を感じないのが「自転車脳のひと」である。

ショップから歩いて帰宅。土手沿いの道脇には真っ赤な曼珠沙華が咲いている。午後3時過ぎの日射しには、すでに夕暮れのやさしい色調が含まれている。季節は間違いなく秋だ。

本日の歩行距離は約20km、さすがに疲れた。

13日後・9月28日(土)三角巾

昼食にチャーハンを作って左手で中華鍋を振ったが、特に痛みは感じなかった。

家では三角巾で腕を吊るのをやめた。

しかし三角巾で腕を吊っていることのメリットも感じている。スーパーで買い物をすればレジのお姉さんが商品を袋に詰めてくれるし、宅配の配達員さんもねぎらいの言葉をかけてくれる。

リハビリの先生も、人ごみで身体をぶつけられるおそれが少なくなることのメリットを話していた。外出時はもうちょっと吊していようかな。

手術後患部2

16日後・10月1日(火)抜糸

整形外科に通院。ブロンプトンで往復。歩きより早いし、断然楽。

まずレントゲンを撮る。その画像を見ながら、経過は順調であるとの説明がある。

患部に貼られていたパッドを剥がして消毒、ハサミで抜糸し、新たなテープが貼られた。

手術創は塞がっているので、テープが剥がれてしまったら、そのままでよいとのこと。左手で重いものを持たなければ日常生活の動作は問題なし。三角巾も必要なし。

骨がつながるのに早くて四週間。それまでは腕立て伏せなども、もちろん厳禁。次の通院は一ヶ月後。

抜糸後患部

19日後・10月4日(金)リハビリ

リハビリで通院。

テーブルに対して直角に座り、左腕をテーブルにのせて前から後ろまで動かす台拭き運動。

リハビリ用のゴムバンドを握って両腕を広げる運動を二種類。ゴムバンドの端を柱に固定して左腕を使って引っ張る運動を一種類教わる。

そのあと肩のマッサージ。まだ張りはあるが一週間前よりは確実に肩の可動範囲が広がっている。

次のリハビリ通院は二週間後。ゴムバンドを貸してもらえる。

20日後・10月5日(土)ハンドウェイト導入

左腕を振ることができるようになったのでステッパー運動時に750gのハンドウェイトを導入。両手に握って交互前後に振る。腕を前に上げるフロントレイズの動きをするとまだ痛みがある。

24日後・10月9日(水)頭や背中がかけるように

左手で頭をかいても痛みを感じなくなるまで回復。背中もかけるようになった。ただ腕を動かす角度によっては肩前部に「つっぱり感」が残っている。ゴムバンドを使ったリハビリ運動は毎日続けている。

25日後・10月10日(木)猫が布団に入る季節に

氷らせたアイスノン枕でしのいだ真夏の熱帯夜が遠い昔の出来事のような涼しい、肌寒いほどの夜。さすがにまともな掛け布団を出してきた。

夜明け前、トイレに行って布団に戻ると、ケインがやってきた。私の左肩をトントンする。掛け布団をあげると左脇に潜り込んできた。

猫がすり寄ってくる季節になったのだ。ケインはいつものように私の左腕の上で身体を伸ばしているが痛みや違和感はまったくなし。

ただ、眠りから覚めたときに左肩前部の張りをより強く感じる。眠っている間に動かさない筋肉が固まっているということだろうか。

26日後・10月11日(金)オーバーホール完了

anchorのオーバーホールをお願いしているショップから完了報告の連絡あり。予想より一週間ほど早かった。

明日は天気が荒れる予報なので、週明けに受け取りに行くこととする。

31日後・10月16日(水)台風禍、1ヶ月ぶりの乗車

anchorの引き取りにショップまで行く。

土手の道を歩くが、先日の台風の影響のすさまじさに圧倒される。土手下に広がる野球場やゴルフ練習場は一面泥に覆われている。フェンスや簡易トイレががすべて流され、土手の草むらに積み重なる。水流に耐えた立木の周りには、流木や草とか泥が塊となって堆積している。一部のグラウンドでは水がまだ引かず、池となったままだ。

河原から土手の半分くらいまでは水が来たようだ。河原の道は泥に覆われ、自転車ではほぼ通行できない状態。所々で復旧作業が進められているが、台風前の状態に戻るのはいつになるのか見当もつかない。

台風禍

ショップでオーバーホールの詳細と、新たにつけたDi2の説明を受ける。オーバーホールにBB交換、Di2込みで約18万円なり。

帰りは土手の道ではなく、横を通る一般道を走る。

Di2のファーストインプレッションは、巷で言われているように変速が早く、的確なこと。

リアの変速はとても静かで、「ホントに変速したの?」と訝るほど。フロントの変速はモーターがギュイーンと唸って、これもかっこいい。

変速レバーがスイッチになったことで、操作する指のストロークが小さくなり、なんとなく心もとない気もするが、慣れの問題だろう。

パソコンにつなげて色々設定ができるようなので、明日いじってみようと思う。

一ヶ月ぶりに自転車に乗った。左肩の違和感はなしだが、ペダリングは踏み込みと抜重の要領を得ない感じ。こちらもリハビリが必要のようだ。

Di2 フロントDi2 リア

32日後・10月17日(木)30kmライド

今にも雨が降りそうなどんよりした曇り空。

肌寒いのでアームカバーを装着して一ヶ月ぶりにまともにanchorに乗る。

台風の影響がない近所の土手沿いの道を往復。30kmあまりを小一時間。左肩は問題なし。

Di2のフィーリングは最高。現在のギアのポジションをサイコンに表示できるのはありがたい。それにしても寒くなった。

33日後・10月18日(金)リハビリ、ライド

リハビリで2週間ぶりの通院。

椅子に座り、頭上の滑車に通したロープを左右の腕で交互に引っ張る運動を5分間。左腕をまっすぐ上げて、左脇腹を伸展。

手術後は左手を上げて洗濯物を干すのも難儀したが、左肩に少し違和感があるだけで問題なく左腕を上げられるようになった。

ゴムバンドを使ってインナーマッスルを強化したので、次はウェイトを使ったアウターマッスルの強化。傾斜のついた製図台のような器具の前に立つ。台には、両側に木の棒がついている木箱がのっている。木箱に重りをのせて、両手で木の棒を握り、台に沿って斜め上に押し上げる運動。バーベルプレスの斜めバージョンといったところか。バーベルプレスは、下半身の反動を使って肩への刺激が逃げたり、姿勢の保持がいい加減だと腰を痛めたりするが、この器具は重りの上げ下げの軌道を台が保持するので、安全に刺激が与えられる。10kgの重りをのせて30回を3セット。汗をかいた。

左手首にウェイトをつけて、スチール製の扉にはりついた小さなマグネットを移動する練習。頭の高さに並べられている30個ほどのマグネットを、左手を使って、頭上めいっぱい上まで移動する。終わったら元の位置へ戻す動作。地味に効く動作だ。

そして肩のストレッチを3種類。動かす方向によっては肩の前部に痛みがある。椅子に座って肩と背中のマッサージを受ける。これが心地よい。次の通院は3日後。

家に帰り、昼食をとってから昨日と同じ土手沿いの道をanchorで走る。今日はレッグウォーマーもつける。33km、1時間20分。

キンモクセイの香りが懐かしい。

34日後・10月19日(土)Zwift

天気がよくなく、かつ人出が多くなる週末だということで室内でローラー台を回す。Zwiftは1ヶ月と10日ぶりのログイン。

気温が下がり、扇風機は必須だが、シューズの中まで汗だくになるようなことはなくなった。

36日後・10月21日(月)リハビリ

リハビリ通院。やったことは先週とほぼ同じ。祭日前だからか、会計で1時間以上待たされる。一週間後に整形外科の診察がある。

44日後・10月29日(火)通院

冷たい雨が降る一日だった。レインウエアを着てブロンプトンでリハビリと整形外科へ通院。リハビリは本日で終了判定。整形外科ではレントゲンとCTを撮影した。念のために3週間後に経過を見たいとのこと。

45日後・10月30日(水)土手ライド

久しぶりの秋晴れ。午後からanchorで土手の道を走ってみる。

河原では重機が土砂をかき分け、手押しの一輪車に流されてきたゴミを積んで片づけている人もいる。土手下を通る道は泥を脇に寄せて整備されているが、先週末の雨でぬかるみとなっているところもあった。ロードレーサーでは前進が厳しいところもあり、10kmほどで折返す。近場の道をぐるぐる走って30kmあまり。暑くも寒くもなく、風もなく、走りやすかった。

65日後・11月19日(火)通院、Zwift Rod to Skyチャレンジ

初冬のよく晴れた空のもと、ブロンプトンで整形外科へ通院。

レントゲンと簡単な診察。今回で終わりかと思ったが、一ヶ月後にもう一度診てみたいと主治医の言葉あり。次回はCT撮影もあるとのこと。

CTスキャンは医療費が高いので勘弁して欲しい。自覚症状としては痛みは限りなくゼロんに近く、肩関節の回旋に支障は無いし、患部の張りもほとんど感じなくなった。

ZwiftでRoad to Skyにチャレンジ。この寒さでさえ、床には汗の水たまり。シューズの中までビチョビチョ。たまらん。

73日後・11月27日(水)Zwift The pretzel

外は冷たい雨の一日。ZwiftでThe pretzel を走る。72.1km、獲得標高1,333m。かかった時間は3時間弱。後半はタレタレ。床は今までで一番の汗の水たまり。さすがに疲れた。

でもZwiftのすごいのは、これだけ室内でローラーを回しても飽きて辛くはならないこと(肉体的には辛いけど)

80日後・12月4日(水)落車現場へ

よく晴れたので久しぶりにanchorに乗って多摩サイを走る。

台風の影響はまだそこかしこに見受けられるが、復旧作業の尽力によって元のように走ることができるようになっていた。ごく一部に浅いぬかるみがあり、anchorはそれなりにドロドロになったけど。

30km走って、落車した現場に約3ヶ月ぶりにやってきた。

舗装路を横切るように、アスファルトがひび割れた隆起があった。歩いたり、走ったりしてもたぶんつまずかないような些細な「うねり」だが、ロードバイクの細いタイヤにはそれなりの影響があったのだろう。

落車現場1

落車現場2

思い返すと、同じ場所でハンドルを取られそうになってヒヤッとしたことが何度かあった。

こんなデコボコは至る所にあるのだから、ハンドルの握りをおろそかにしないことが大切だと、改めて気を引き締めた。

鎖骨の調子だが、痛みはまったくない。腕や肩を動かしても違和感もなくなった。ただ寝起きに張りを感じるのは変わらず。

93日後・12月17日(火)通院ほぼ最終

久しぶりの通院。レントゲンとCTを撮影する。簡単な触診と、腕と肩の回旋を行い、痛みがないことを確認して、ほぼ完治と診断される。3ヶ月後にもう一度だけ診たいということで予約を入れた。

病院から外に出ると、落車した日の汗ばむ暑さを思い出すのが難しいような、冷たい小雨が降る冬があった。

あの日から3ヶ月しか経っていないのに、ずっと遠い昔の出来事のように思えた。

100日後・12月24日(火)…

よく晴れたので多摩サイを走りに行った。冷たい向かい風がこたえたが、ギアを軽くして、程よい負荷でグイグイ進む。

自分にとって「程よい負荷」を可視化するツールとして、パワーメーターはとても優れている。

スマートトレーナーの tacx neo 2 で Zwift を走るようになって、実走でもパワーが知りたいと思い、Stages のクランク型パワーメーターをヤフオクで購入したのが7月に入ってからだった。

当初は表示される計測数値のあまりの低さに呆然とするばかりだったが、貧脚なりの「がんばり」が数値としてリアルタイムで確認できるのは、とても楽しいということがわかってきた。

たとえ強い向かい風でも、サイコンの速度を見て走るより、ずっと明確な走り甲斐(ペダルを回す対価)を感じることができるのだった。

ガラガラの多摩サイを走って、多摩川緑地野球場の大木までやってきた。

多摩川緑地野球場の大木・冬

台風19号の爪痕がまだ残っていた。ここに来る前に通った日野橋は現在も通行止め。遠くから眺めても橋が途中で沈下しているのがわかる有様だ。日野市のHPを見ると、来年の梅雨前をめどに復旧工事を進める、とある。

落車を起こしてちょうど100日、季節は真夏から真冬へと変わった。その間に、ギラギラの強い日射しをものともしない緑の葉は落ち、芝生も枯れたが、私の折れた鎖骨はどうやらつながったようだ。

さらに200日ほど経てばまた夏がやってくる。再び緑は茂って濃い影を落とし、日野橋の往来は復旧するのだろう。

その時、私はどんな道を走っているのだろうか。

真夏のライド1

 

最後に

いたずらに長くなってしまったモノローグに最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

鎖骨を骨折して3ヶ月経ったいま、痛みはまったくなく、腕や肩の可動域の制限もありません。

ただ長時間、肩を動かさなかった場合(寝起きなど)、最初の動作において肩の前部(患部周辺)に軽い張り・つっぱりを感じます。

今回の落車の原因は、ハンドルの握りの甘さにありました。

ハンドルを握り込むのは良くないとしても、必要な力を入れて、しっかり握ることはとても重要です。

そして、

舗装路だとしても大小のデコボコが突然現れるという予測をもって走ることも重要ですね。

さらに、

今回は不幸中の幸いにも単独自爆事故でしたが、一歩間違えれば他者を巻き込む惨事につながる可能性はおおいにあったわけです。

多摩川サイクリングロード(コース)という名称ですが、自転車専用道路であるわけではなく、歩行者・ランナーなど他者と共存を考える必要があります。

そこではダントツのスピードと機動性を発揮できる自転車だからこそ、

一歩引いて、譲る気持ちをもって走りたいと思います。

それでは楽しい自転車ライフを!

 

【参考】落車・鎖骨骨折でかかった費用などについて

医療費(A)
 初診事故当日・レントゲン、CTスキャン、鎮痛剤など10,200
 入院前検査血液検査、尿検査、心電図、レントゲンなど4,640
 入院・手術3泊4日106,332
 通院整形外科およびリハビリテーション科21,050
小計142,222
自転車機材(B)
 オーバーホール曲がったブレーキブラケットの修正を含む30,000
小計30,000
保険・高額医療費(C)
 自転車保険金額 14,000
 高額医療費支給 21,825
小計35,825
総合計(A+BーC)136,397

 

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Posted by movinow